転職当時は正直、紙からWebへ行くなんて
“都落ちだ~っ!”って思ってました(笑)
「叶うなら、本当はずっと紙の世界にいたかった。でも今は、紙もWebもそれぞれに面白さがあるなあ~って思うんですよね」と話す、Webディレクター歴5年のERIKO。紙からWebへと転職を決意した理由や、Webも面白いと感じるようになったきっかけなど、くわしく聞いてみました。
未経験転職時:38歳/Webディレクター歴:5年
2017年 東京西新宿の企業「全研本社」のIT領域・コンテンツマーケティング事業の制作部門に、職種未経験でWebディレクターとして入社。はじめて携わったWebディレクションの業務はポータルサイトの文章台作成。Webディレクションの中で一番好きな瞬間は、サイトにデザインが反映された瞬間。「これから長い戦いになる編集は白目状態ですが(笑)理想以上のデザインが上がってくると、このデザインを1P1P活かしていこう!と嬉しくなります」。漫画で育ち、漫画で人格形成されている。マイベスト本は「魁!男塾」。
目次
——Webディレクターになる前はどんな仕事をしていましたか?
高校卒業後からずっと紙媒体の仕事をしていました。もともとゲーム雑誌や攻略本が大好きだったので、そうした雑誌や書籍を発行している会社にアルバイトで入って、月刊誌の制作に携わっていました。少しスキルがついてきたときに、他の雑誌もやってみたくなって、21歳でフリーランスに。そこから10年くらいはライター業をメインにお仕事していたんですが、やっぱり人生の中で一度はファッション誌で働いてみたい!と思って、有名ファッション誌の制作を手掛けている編集プロダクションに転職しました。その後またフリーに戻ったり、転職したりしながら、週刊誌から参考書の制作まで、ひたすら紙媒体の編集職で生きてきました。
——Webの編集職には興味がなかった感じですか?
当時は今ほどWebメディアが伸びていなくて、きちんとプロの手で“編集”された品質の高いコンテンツといえば、まだまだ紙が主流だったんです。だから私も「編集者=紙媒体」という感覚だったんですよね。
だけど一方で、「このままずっとここに居続けるのは難しいだろうな」という意識はありました。
紙の世界はまだまだ、校了前の深夜作業や泊まり込みは当たり前。取材や撮影で昼夜関係なく走り回るのも日常茶飯事。徹夜明けに、会社から自宅に小道具を取りに立ち寄って、ついでにシャワー浴びて着替えだけして、ソファに座りもせずにスタジオに向かう、とか。
——ハードですね……。
雑誌は意外と少人数・短期間の中作っているので、わりとどこもそんな感じでしたよ。うん、でもやっぱりそんな生活はずっとは続けていけないな、というのは30代に入ってより考えるようになりましたね。
だから、38歳のときに子供が生まれたことをきっかけに「紙はもう諦めよう」と決心したんです。
——諦める……。やっぱり紙媒体の編集職に未練はありましたか?
はい。単純に「紙の雑誌・書籍」が好きだったから。
紙は、読み手の愛情が違うなと思うんです。「その記事を読みたい人」が買ってくれるものなので。
だから私は、自分が編集に携わった雑誌が発行されたあとに、自分が書いた記事の感想を検索するのが好きでした。
雑誌って、編集後記に「この記事を担当したのは誰々」って名前が掲載されるでしょ。すると読者さんがSNSで、「ERIKOさんが書いた記事、めっちゃ愛がある」とか呟いてくれていたりする。そういう時に「届けたかった人に届いた!」って、本当にやりがいを感じてました。
私、大好きなアイドルがいるんですが、その人がCDやアルバムを出すと、同時期に何十冊もの雑誌に登場するんですよね。そうすると学生の頃なんか、少ないお小遣いの中からその時に買う1冊をものすごく悩んで選んで買っていたんです。そしてその1冊を、ずっと大切に手元に置いてました。
編集者になってからはずっと「その1冊に選ばれるものを作りたい」って思っていました。
——それだけ思い入れのあった紙媒体からWeb媒体へ転職することに決めたとき、どんな心境でしたか?
正直言うと……「紙からWebへ行くなんて、都落ちだ~っ!」って思ってました(笑)
——都落ち!(笑)
今は全然そんなこと思ってないですよ!転職当時ね。
あの頃は、Webで何か情報を検索したら、怪しいアフィリエイトサイトとかがいっぱい検索結果に出てきていたんですよ。“編集されたメディア”とはとても言えないようなWebサイト。そのせいもあって、最初はWebの編集職にあんまり良いイメージがなかったんですよね。
でも、自分には編集しかできることがないから、紙がダメならWebに行くしかないと思って、編集者を募集しているWeb制作会社を探しました。
——そうして全研本社のWebディレクター職(Web編集者)を見つけたんですね。
はい。その全研の選考のときにびっくりしたことがあって……。
Webとは言え、編集職なんだからどうせ夜遅いんだろうな、と思って「だいたいいつも皆さん何時くらいまで会社に残って仕事されてるんですか?」と聞いたら、面接担当者が「うちは8時40分には全員強制退社です」って。それを聞いて私「それって朝ですか?夜ですか?」ってガチのトーンで聞いちゃったんです(笑)
——(笑)
面接担当者に「えっ……?夜ですよ」と戸惑いながら言われて、「うそでしょ!?なんてホワイトなの!」ってびっくり。それで入社を決意しました(笑)。
——すごい(笑)決断が速いですね。
「Web制作の現場ってどんなのだろう、一回入って見てみよう」って、結構ライトな感じで。合わなければまた転職すればいいし。
選考中にオフィスの様子も見せてもらったんですが、みんなこざっぱりしていて明るい雰囲気だったのもよかったんですよね。雑誌の編集部とか、徹夜続きでくたびれた感じの人や、その辺で寝てる人がいたりしますから(笑)。
世界的ベストセラー『嫌われる勇気』をはじめ数々の名著、ロングセラーを執筆してきたライター・古賀史健氏が、「取材」「執筆」「推敲」の三部構成・全10章、21万文字、約500ページをかけて「ほんとうの核心」だけを教える、書く技術・伝える心得の永久決定版。
「文章に携わる人全員に読んで欲しい本です」
すべての人に効く、図と絵でわかる“働き方バイブル”。
「働くことに関しての概念的な話を、絵でわかりやすく解説している本。働く人間という人間全員に、それぞれ何かしらぜったい得るものがある本だと思います。編集目線でも、絵の使い方、わかりやすさがすばらしい」
多くの日本人に勇気と希望を与える、今を生き抜くヒントの書。
「昔、とある方に“なんで白か黒かしかないんだ。曖昧力を読め!”と(優しく)言われて、なんで白か黒かじゃダメなんだ!と、半ば意地で読んだ本です。白か黒かに当てはめようとすると、どうしても無駄な正義感を振りかざすシーンもあるなと学びました。この本のおかげもあり、今は少し“曖昧力”が身についたかもしれません」
——Web未経験でWebディレクターとして仕事を始めてみて、紙の仕事とのギャップはありましたか?
ギャップとは少し違うんですが、「トータルで制作を任せてもらえてうれしいな~」と思いました。
紙媒体にいたときにカタログのディレクションをしたことがあるんですが、一部の工程を担うだけで、最初から最後まで全部に関わることはできなかったんです。でも全研のWebディレクターは、サイト制作の最初から最後まで全部担当できる。それがすごく楽しいですね。
苦労した点で言うと、IT用語やマーケティング用語かな。
本当に全く知らなかったので、会話の中でわからない単語が出てきたらメモしてあとから調べたり、事業部長によるコンサル営業のための戦略提案研修に皆勤賞で出席したりして勉強しました。
でも、紙媒体から紙媒体へ転職するときだって会社ごとに全然ルールが違いましたし、その会社ごとで覚える用語や新しいツールはたくさんありました。紙からWebも、それと同じ感覚でした。
——紙媒体で培ってきたスキルが活かせるな、と思うのはどんなときですか?
雑誌の制作もWebサイトの制作も「相手に届けるもの」だから、ベースは同じなんだと思います。紙で養った編集スキルや制作に関する知識は、Webでもそのまま「読者のために良質なコンテンツを作る」目的に活かせます。
最初は「紙からWebは都落ち」なんて、ちょっと悔しく思ってましたけど、Webディレクションの仕事を知れば知るほど、紙にもWebにもそれぞれの面白さがあるんだなって思えるようになっていったんですよね。
——Webに対してポジティブな気持ちになっていったきっかけはありますか?
同じ制作部のWebディレクター・Rさんの存在がきっかけです。
当時24歳だった彼女が、入社して間もない私のメンターを務めてくれたのですが、ライターから上がってきた原稿を読んで二人でキャッキャしながら喜んだり、メインビジュアルに使う画像1枚のことで長時間議論したり、毎日全力で制作に向き合っている姿を隣で見せてくれました。その姿がとても楽しそうで、私も一緒にわいわい言うのが楽しくて。
Rさんは、その当時全研で公開されたばかりのサイトの解説をしてくれたりもしたんですけど、解説しているとだんだん「みんな下層ページのこと舐めすぎ!こんなところにリンクボタンをポンッと置いたくらいで押してもらえるわけないのに!」って本気で怒り始めたりして (笑)。
「あ~、こんなに若い子が、ものすごく真剣に制作に取り組んでいるんだなあ。いいなあ」って感動したのを覚えています。
——いいですね!RさんのWeb制作に向き合う姿勢が、ERIKOさんの中でWeb制作全体のイメージを変えるきっかけになったんですね。
はい。それまでは、リンクがべたべた貼られた適当なアフィリエイトサイトとかが私の中での“Webサイト”だったので、「全然違う!」とWebの悪いイメージを打ち崩すきっかけになりましたし、「Web制作の現場にも情熱を持った編集者がいるんだ」って、良い意味で衝撃を受けたんですよね。
——最後に、Webディレクターの仕事の中で最も嬉しい瞬間・やりがいを感じる瞬間を教えてください。
私は仕事に嬉しさややりがいをあまり求めないほうかもしれません。それでも当然クライアントから「ありがとう!」と言っていただいたときや、自分の想像以上の良いサイトになったなと思うときは嬉しいですね。
仕事はどんなものでも基本、99苦しくて、1楽しいものだと割り切っています。でも、その“1”のためにやっているのではなく、 “1”をみんなで共有し、増幅させることは必要だし、そこは自分自身で上手かな~、とは思っているポイントです^^
なんだか最後の最後でめちゃめちゃ偉そうな感じになってしまったのですが、要はあんまり考えていないだけです!(笑)
「全研本社のWebディレクター職は、1冊の本を編むかのように自分が中心となってサイトを作ることができます。
何かを作るのが好きな人、想像力がある人、文章を読むのが好きな人、文章は嫌いでもドラマや映画を観るのが好きな人……。
何か創作活動に対する興味があれば、向き不向きはそんなにない仕事じゃないかなあと思います。
どれでも1個引っかかった人は、ぜひWebディレクターへの道を歩んでみてください。
私のように、入社の際のアンケートで「SEOって知っていますか?」という質問に対し、空欄で出すのはまずいと思って「GEOとCEOなら知ってます」と書いたポンコツでも、なんとかなってます!(笑)」(ERIKO)
「Webサイト制作ってどう進めているの?」
「Webディレクターはどんな仕事をするの?」
これを読めばイメージが掴めます!
クライアントの課題解決のために、市場を分析、ターゲットを設定して企画を練り、コンテンツを創るWebディレクター。…と言われても、「Web制作がよくわからないから、いまいちイメージが湧かない!」という皆さんに、新人Webディレクターの一日を追いかけながら、Web制作の現場やWebディレクターの仕事の一部をご紹介します♪
さとゆり
前職はラジオディレクター兼ライター。Web業界未経験でWebディレクターになり丸1年♪ガッツと取材力が武器!